音譜大阪市港区朝潮橋駅スグ
ピアノ教室「ピアノニコリ」
講師の米谷麻弥(こめたにまや)です音譜

「嬉しい別れ。」

この記事は教室の公式LINEに
書いたものです。​​​​

「うちの子はいつまでたっても
良くならない。」

「この子はもうダメなのだろうか。」
と、あきらめかけている
保護者の方にお届けします。

●「嬉しい別れ」

私には現在数十名の娘(生徒さん)がいます。
一番上が70代、一番下は年中さん。

今日は高校3年生の娘の話を聞いてください。

彼女の名前は「ゆりちゃん」。

ゆりちゃんは口数が少なくおっとりした、少し不器用な子。
例えていうなら名前の通り、山陰にひっそりと咲くヤマユリのような子。

登山者が愛でるヤマザクラや、真っ赤に燃えるモミジとは違うタイプの子でした。

ピアノの練習もどう練習したらいいのかわからない。
自分なりにたくさんやっても、結果が出ない。

レッスン中もよく泣く子でした。
同じミスを何度もし、同じ説明を繰り返しされ、
それでも出来ない自分が悲しかったのでしょう。

そんな彼女が明日、大学進学のため横浜へ旅立ちます。
一人暮らしをするそうです。

あんなに不器用で頼りない感じだった子が。

でもあれから10年たった今、
多少の困難は、知恵と工夫と丈夫な心で乗り越えていくだろう、と
少し頼もしく感じるくらいになりました。

そう、ゆりちゃんは最後の最後で、ガラっと変わったのでした。

その変化の仕方は徐々に緩やかに、ではなく、
ある日突然、という感じでした。

小さい時からずっと「不器用ゆりちゃん」でしたが、
「あれ?ゆりちゃんがしっかりしてる!ピアノもとても上手になったし、
色んな資格試験も全部パスしているし、
あんなに悩んでいた進路も、ちゃんと決めて合格している!」と、
彼女の変化に気づいたのは、
ついこのあいだの高校3年生になった頃でした。

片道1時間半の通学を中学から続け、陸上部も続け、ピアノも続け、
大量に押し寄せてくる宿題や模試、定期テストも、
青色吐息で何とかこなし続けたゆりちゃん。

色んな事を「もう辞めようか。」と悩んだ事は
一度や二度ではありませんでした。
が、彼女はそこで諦めず、また淡々と進んでいきました。

彼女に良い変化をもたらしたものは何だったのだろう、と
改めて思い返して見ると、無数の「経験」ではないかと思われます。

いいことも悪いこともたくさんあったと思いますが、
特に「失敗」は、彼女に知恵をつけさせ、
心を強くする肥料になったと思います。

そしてその栄養豊かな肥料のおかげで
時が来た時、ゆりちゃんは大きくて立派な花を咲かせたのだと思いました。

中学生になっても、高校生になっても変わらなかったゆりちゃん。

でもその間ゆりちゃんの内側では、着々と花を咲かせる準備をしていたんだね。

自分で自分を辛抱強く待っていたんだね。

ヤマユリとばかり思っていましたが、咲かせた花は
同じユリ科でもタイプが違うカサブランカだったのでした。

カサブランカの存在感は、
その控えめな色合いにもかかわらず、
バラにも勝る強さを感じるのは私だけでしょうか。

人生は、先を行くものが勝つとは限りません。

人生というレースで、途中経過に一喜一憂したところで
それが何になるのだろうか、と思います。

途中で、他のみんなに引き離されることもあるでしょう。
どうがんばっても先に進めないこともあるでしょう。
そんな時こそ安易な方へ目移りせずに歩んで行けるように
サポートしていく事が大事だな、そうしていこう、
と思いました。

第二、第三のゆりちゃんがまた現れることを楽しみにして。

そして「待つ」ことの大切さをを忘れずにいたいと思いました。

もうレッスンの時間が来ても、今週からゆりちゃんには会えません。
そう思うと悲しいですが、
ゆりちゃんの未来の事を想うと笑顔になれます。♪米谷

おしまい。

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