ピアノと言えば、今も昔とかわらず王道の習いごとではあるのですが、テレビ番組『ホンマでっかTV』の中で、脳科学者の澤口俊之先生が“習い事をさせるならピアノがいい”“ピアノが脳にいい”と発言されたことは、あらためてピアノが注目されるきっかけにもなりました。そして、子育てママたちの間でもたちまち話題に!でも、“脳にいい”とはどういうことなのでしょうか?そこで、澤口先生に“ピアノが脳に及ぼす効果”について詳しくお話を伺いました。
ピアノは脳機能をまんべんなく育て“地頭”をよくする
「まず、ピアノを習えばピアノに必要なスキルが身につくのは言うまでもないですね。しかし、ピアノが他の習い事と違うのは、それだけに留まらない万能性があるからなんです」スキルのほかに、いったいどんな効果があるのでしょうか?「人というのは、夢をもち、その夢をかなえるべく努力して成功し、幸せな人生を送りたい(あくまでも主観的な成功)…だれもがそう願うものですね。そして、そういう人生を送るためには、IQ(一般的知能)よりもHQ(人間性知能)という知能が重要と証明されているのですが、さまざまな習い事や余暇の過ごし方の中でも、すべての実験においてダントツにHQが向上するという結果を出しているのがピアノの稽古なんです」
いきなりHQという耳慣れない言葉が出てきましたが、HQとは?
「簡単に言えば、“人間らしい人生を送るための脳力”のことで、夢や目的に向かって適切に行動する能力“未来志向的行動力”と、理性・思いやり・協調性を身に付けてうまく生きる能力“社会関係力”です。つまり、HQの向上は、夢の実現や社会的成功、良好な恋愛や結婚生活、さらには運動能力や器用さ、言語能力、IQの向上にまでも繋がるんです」
ピアノを習うだけで、こんなにいいことがあるとはまさに驚きですが…。
「そうです。スキルを身に付けることができる習い事はいっぱいありますが、能力(アビリティ)まで得られる習い事は珍しく、ほとんどないんです」
では、ピアノの何がHQ向上効果をもたらすのでしょうか?
「ピアノというのは、両手を並列かつ複雑に使い、楽譜を一時的にも記憶しながら演奏し、さらに次に弾く楽譜を先読みします。そして特に重要なのは両手を同じように使いますが、その使い方がまったく異なるという点です。これは他のものにはない非常に高度な行為なんですね。つまり、ピアノをやっていると、自然にすべての脳機能を高めてしまうというわけです」
ピアノは脳の構造まで変える!?
「ピアノのレッスンを続けることによって、脳の監督役でもある前頭前野が構造的に発達し、HQの長期的な発達につながります。また、脳梁(のうりょう)と呼ばれる部分が太くなり、左右の脳のバランスがよくなるんです。まだまだあります。
小脳も大きくなり、運動機能や知的機能、感情的機能までもアップします。さらに、海馬とよばれる部分が発達し、記憶力がアップするので、学力向上につながります。つまり、ピアノを習うことによって、脳機能をまんべんなく育て“地頭”をよくすることができ、スポーツや学力まで効果を及ぼすんです」では、ピアノをいつ習わせれば効果的なのでしょうか?「HQを高めるためには、5歳~8歳ころがより効果的です。週に1回40分のレッスンでいいんです。ピアノに関しては、4ヶ月くらいで効果があらわれ、脳構造を変えるまでには2年くらい必要です。あとは、“やればやるほど”という継続期間との相関になります。ちなみに、大人になっても、子どものころほどではありませんが大人なりの効果はのぞめますよ!」
そろばんとサッカーもHQを向上させる効果あり
そこで一番知りたいのは、ピアノのほかにもHQを高める習い事はあるのかということ。
「ピアノほどの効果がみられるものはありませんが、現時点で効果が証明されているのは“そろばん”です。それから、最近ではサッカーにも効果があるという研究結果が出てきています。今、私が脳にいい効果をもたらす習い事としてすすめるとしたら、ピアノ、そろばん、サッカーの3つですね。ただ、あくまでも現時点なので、研究が進むにつれてもっと効果的なものが出てくる可能性はあります」
では、習い事をするとき嫌々やった場合は、脳への効果はあるのか気になるところ…。
「これは、やはり楽しんでやるほうがより効果的ですね(笑)。つまり、ドーパミンが出た状態でないと基本的には効果は望めないのですが、子どもはもともとドーパミンの数値が高いので、訓練と思って取り組んだり、嫌々でも取り組んだほうがよりいいと思います」
今もなお、ピアノが習い事の王道に君臨することには、やはりそれだけの理由がちゃんとあったと言えるのかもしれませんね。
お話をお聞きした人
お子さんの習い事のこと、成績のこと…ママの日々の悩みは尽きませんね。そこで、脳科学的観点・立場から教育現場に深く携わっていらっしゃる脳科学者・澤口俊之先生に、悩めるママたちから寄せられた習い事にまつわるお悩みに答えていただきました!
Q1.子どもが習い事を嫌々やっている場合、どう対処すればいいですか?(35歳/娘7歳)
Q2.子どもの習い事が上達しないときや成績やテストが悪いとき、どう声をかければいいですか?(38歳/息子10歳)
Q3.娘が中学校受験に向けて勉強が忙しくなり、習い事のピアノをやめさせようか悩んでいます。(43歳/娘11歳)
Q4.娘がピアノを習っているのですが、我が家は電子ピアノです。本物のピアノじゃなくても脳への効果はありますか? (33歳/娘8歳)
Q5.ピアノが発達障害の改善に効果的だというのは、本当ですか?(30歳/息子5歳)
まずピアノの前に座れるところまでは別系統の訓練でもっていってください。それができるようになったら、発達障害の子を受け入れてくれる個人レッスンのピアノの先生をさがします。あとは、普通にレッスンを受けてください。最初は1本指で弾くだけでいいです。10分でもいいのでレッスンしてください。10分の場合は、2日に1回か3日に1回くらいやったほうが効果的です。最終的にはきちんと両手で弾いて、楽譜を見てっていうところまでもっていってほしいんですけど、当然ながら時間はかかりますし個人差もあります。でもあせる必要はないです。そして、お母さんは先生にお任せしてください。お母さんでは対応しようとしても不可能なんです。どうしても感情的になってしまい、不安感もお子さんに伝わってしまう。不安感というのは脳には一番よくないですし、お母さんもそれのほうが辛くないですからね。▼関連記事をもっと読むなら▼
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もっとも貴重な幼児期は短いんです
『ピアノが脳にいいってホント?』の中で、澤口先生にはピアノがどのように脳にいいか?というお話をしていただきました。
「ピアノはスキルを伸ばすだけでなく、地頭をつくる万能な習い事ということが脳科学的に証明されているというお話をしました。今おこなったことが、いろいろな能力につながる…こういった現象を“般化現象”といいます。実は、般化現象がとても重要なんですね。貴重な幼児期は、あまり時間がありません。だいたい遅くても8歳、本来は6歳までに般化現象を起こすような何かをやっておかないといけないんです。いろいろなことが将来できるためのベースを作れるのが8歳までだからなんです。もちろん様々な習い事があって、やりたいことも人それぞれですから好きな習いごとをやってスキルを身につけることは必要です。ただ、あれもこれもではお子さんも大変ですし、人生を生き抜くためにはスキルだけではダメなんです。好きな習いごとがあるなら、それもやりつつ、8歳までに般化現象を起こし能力を伸ばす効果がある習い事もやることをおすすめします。それが、今の時点ではピアノであり、そろばんであり、サッカーという研究結果が出ています。ピアノに関しては、学校の必修科目にしてほしいくらいです(笑)。どうか、幼児期の限られた時間の中で、お子さんの能力を最大限に伸ばしてあげてください」
大事なのは“社会の中でうまく生きていく知能を育てること”
習い事をさせるにあたって気をつけるべきことはありますか?
「一番よくないのは、特化したものばかりやって、その成功に満足することです。つまり、計算だけ特化してできても文章問題ができないのでは意味がありません。跳び箱ばかりやってそれだけが特化してできても、ボールがうまく蹴れなければ運動知能が伸びているとは言えません。受験勉強がいい例です。あれは、勉強のスキルは身につきますが、能力を伸ばすものではありません。あくまでも受験を勝ち抜くためのスキルなんです。いい学校に受かったからといって、人生の成功ではないですよね?いい学校に入っても社会に出てドロップアウトしてしまう人はたくさんいます。逆に受験で失敗したからといって、人生で成功している人はたくさんいます。つまり、人生を生き抜くために必要なのは、スキルではなく、自分の頭で考え、自分で判断し行動できる能力・地頭が何より必要です。そこを伸ばしてあげてください。そして、どうかお子さんの目の前の成功や失敗に一喜一憂しないでください。あくまでも“今は社会の中でうまく生きていく知能を育てている”という段階なので、もっとずっと先を見据えて見守ってあげてください。お子さんが自分の夢をもち、将来それを叶え幸せな人生を送れるように、お子さんを信じて導いてあげてください」
子育てママたちが悩むテーマのひとつに、“子どもの習い事”がありますね。たくさんある習い事の中から、何をやらせたらいいのか?成長著しい子どもの幼少期は、その子の将来にとっても大事な時期になるので、悩むのも当然ですね。
そんな中、昔も今も“習い事の王道”として人気が衰えないのが“ピアノ”です。今でこそ、スイミングスクールや学習塾、英語教室などに押されぎみではあるものの、常に上位にランキング。“体力をつける”“成績を上げる”など、わかりやすいメリットがあるようにも思えないのに、なぜ人気なのでしょうか?そこには、いろいろと理由がありそうです。
そこで、我が子にピアノを習わせているママの声をもとに、その理由を検証してみました。
ピアノは人生を豊かにしてくれる!?
我が子(幼稚園~小学生6年生まで)に、ピアノを習わせているママ50人に“なぜピアノを習わせているのですか?”という質問をしたところ、さまざまな意見が寄せられました。まずは、それらの代表的なものを挙げてみます。
「子どもがピアノを習いたいと言ったから」
「自分が小さい頃にピアノを習っていて、今よかったと思っているから我が子にも習わせたかった」
「ピアノが弾けると素敵だから」
「ピアノを弾ける人が羨ましくて、我が子には弾けるようになってほしかったから」
やや漠然とした理由が多いものの、自分の経験などもふまえて“ピアノが弾けるといいことがある”“ピアノが弾けると人生が豊かになる”といった将来へのプラスイメージが読みとれますね。
ピアノは音楽の基礎が身に付く!?
一方、以下のようなスキルの部分での具体的な理由を挙げるママも多かったんです。
「ピアノを習っておけば、音楽の基礎が身につくから」
「ピアノが弾けると、どんな曲もひとりで表現できて、大人になっても楽しめるから」
「楽譜が読めるようになると、将来いろいろ役に立つから」
「音感を身につけるのは早い時期がいいと聞いたから」
こちらは、かなり具体的な意見ですね。
確かに、ピアノは音楽の基礎を学べる楽器として知られています。
88鍵と音域が非常に広く、一人で曲のオーケストレーションが演奏できる万能楽器。どんな曲もひとりで表現し楽しめるのは、他の旋律楽器(管弦楽器など)には味わえない究極の魅力です。
また、ピアノは演奏のみならず、音楽教育や作曲などにも広く用いられ、例えば音楽大学では、専門楽器が違う生徒も必ずピアノは副科で勉強しなければならないほど、音楽の基本中の基本になる楽器なのです。
また、ピアノは音域が広い分、他の旋律楽器に比べて“楽譜を読む力”もより高度に要求されます。両手のパートの楽譜を同時に瞬時に読む訓練をしてあるので、ピアノをやっておくと他楽器に変更しやすいというメリットもあるのです。つまり、ピアノをやっておけば、その後ブラスバンド部に入ったり、バンドをやったり、コーラスをするにしても、可能性が容易に広がるのです。
さらに“音感”という言葉が出てきましたが、幼少期に音楽を学べば、音感が少なからず鍛えられることは言うまでもありません。(絶対音感については、8歳くらいまででしか身につかないといわれている)
こうしたさまざまな意見がある中で、50人のママの中には、一人も“ピアニストになってほしいから”と言ったママはいませんでした。音楽が人生を豊かにしてくれるというイメージは多くの親御さんが持っているものの、ピアノを習わせてピアノで大成してほしいとまで思っているケースは少ないのかもしれません。
つまり、人生の中で音楽を楽しんでいくための基盤、素養、かけがえのない財産になるものとしてピアノを習わせてあげたいということのようです。
ブリランテピアノ教室
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